2010年7月23日金曜日

7/23 健康診断ワークショップ

「健康診断ワークショップ」という美術館ではなかなか珍しいタイトルのワークショップが開催された。ワークショップ内容は、
 「生存のエシックス展」の医療系展示作品を使って、専用カルテに、あなたの心・体・脳の健康状態を「生存のエシックス的」に診断します。
というもの。

参加者は、少人数のグループにわかれ、森公一による<光・音・脳>、 中原浩大+井上明彦<関係概念としての知覚的自己定位の研究>プロジェクトよりテンプル・グランディンによる<ハグマシン>、高橋 悟+松井紫朗による<二重軸回転ステージ>を体験する。

<光・音・脳>では、体験者がさまざまな色の光の投影を眺め、変化する水の音をヘッドフォンで聴いている間に、脳血流測定装置による前頭葉の血流測定が行われる。測定結果は瞬時に解析、「心地よい」と装置が診断した色や音に再び生成変化し、鑑賞者に与えられる。





<ハグマシン>では、体験者は自分でレバーを調節し、心地よいと思われる強さまで自分の身体を締め付けていく。

<二重軸回転ステージ>では、投影される映像と自分の身体感覚のズレや扉をくぐり抜ける前後の感覚の微妙な変化を感じながらステージ上を歩行し、携帯型脳血流測定装置をつけ前頭葉の血流測定を行なう。


診断は数値による計測結果ではなく、オリジナルの健康診断票に書かれた設問に答える形で体験者自らが記入していく。

すべての装置の体験が終了した後に、話し合いの場が持たれる。

健康診断は普通、医師による診察や医療器具に基づいた計測の結果が受診者に知らされるものである。けれどこのワークショップには医師はおらず、計測結果も知らされない。受診者に最残されるのは数値に基づいた結果ではなく、経験や感覚である。

これは、健康とは何か?を参加者が自ら問い直す"ワークショップ"であり、一方的に診断が下される"西洋医学的な健康診断"とは異なる。
「診断をされる」と思って参加した参加者はどこか納得のいかない表情であったが、自分の身体を数値に置き換えること、数値が表すものと自分の感覚とのズレ(「心」や「感情」はどこにあるのか?それらは「身体」とは別のものであるのか?という疑問につながる)について考える機会にはなっただろう。

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